油地獄、終了
「女殺油地獄」は六月二十五日、藤沢市での公演をもって終了した。北海道巡演と東京に帰ってからの二回、合わせて16ステージ。稽古日数も少なかったけど公演期間も短かった。でも、短いなりに実り多い公演だったと思う。前やったときは、悪になろうという気持ちが強すぎた。今回は、どこにでもいるどら息子が、ほんのはずみで道を踏み外していく悲劇。そうゆうものになればいいなと思ってやっていた。臆病で、強い者には情けないくらい弱くて、弱い者には傍若無人に振舞う。弱いくせにいきがっていて、どうにもならないくらい追い詰められた時に、はずみで殺人を犯してしまった。そんな与兵衛になりたかった。父の与兵衛もそうだった。
父は女形であり、立役でもあった。女形の芸を充分に身に付けた父が演じる与兵衛には、和事の柔らかい味があった。僕にはその点が一番足りないのだけど、今回の公演ではとにかく柔らかく、柔らかくということを心掛けた。ぎらぎらした男ではなくて、へらへらした男。暗くならずに明るく。
今回で完成なんて思っていない。でも前回、硬くなってしまっていた部分が、力が抜けて楽にできるようになったことは事実。これは僕の中では収穫。
またいつか与兵衛をやりたい、その機会がくることを願っている。
千穐楽の日、何枚か写真を撮ってみた。
これは楽屋入りの時、暖簾の前で。この暖簾は僕の伯母が贈ってくれたもので、この写真にはちょっとしか写ってないけど、なでしこの花が描かれている。僕の初めての暖簾、自分の暖簾を持った時は嬉しかった。
これは、扮装を終えて開演を待つ間に楽屋で撮った。千穐楽のメーク(僕たちは顔をすると言う)は、なぜかいつもより時間をかけてしまう。もう今日でお終いだなと思うと、ついつい丁寧になってしまう。



Recent Comments